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大学教員として生きる道

著者は私大の准教授です。大学教員になるまでの経緯、日常の出来事などを記録します。

教員公募について考える

大学教員になるまでの道のりは,人それぞれなので一概には言えないだろうがこれからの時代,教員公募は多くの人が通る関門ではないだろうか.

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大学教員になりたくて博士課程に進学し,学位を取得していざ就職となるとスムーズに決まる人の方が少ないのではないでしょうか? または,博士課程に進まずに企業から大学教員になる道を選んだ場合も強力なコネがないと公募では決まりにくいと思う。

 

斯く言う私も公募戦線では大変苦労し約100通弱の履歴書をサブミットした経験がある. 平成29年度の国内大学数は国公私立合わせて764大学なので,およそ8分の1ぐらいはサブミットしたことになる.その中で得たことは今後の大学教員を目指す若手研究者に少しは役立つだろうと思うことに加え,公募で教員を採用する立場にあたる研究・教育機関にも役立つ情報を提供出来ればと思う.

 

私が教員公募にアプライしていた時期は,任期付助教時代で上手く行けば准教授での採用を目指し,次に任期なし助教,最低でも職を繋ぐという意味で任期付助教への採用を条件とし国内を中心に職を探した.英語圏の大学へは語学力等の能力不足と家族がいたことから選択肢として対象外であった.

 

私は任期3年更新なしの助教時代の2年目から公募にアプライを始めたのだが,2年目は書類選考を通過して面接まで行くことはなく,3年目には焦りもありつつ,週6〜7コマの授業と研究,そして公募書類作成を毎日繰り返し朝8:00〜夜24:00まで大学で過ごしていた.

 最終的には4つの大学から面接に呼ばれ,更新可の任期付き助教に無事就職できた.

まず第一関門の書類選考を通過するためには,研究業績,教育暦の両方が必要で専門分野が少しでもズレていると見込みはないと感じてきた.研究業績については沢山あるほど良いかというと,そうとも限らない.つまり,採用する側から見ると,あまりにも優れた研究業績があると採用後に扱いにくさを感じるからかもしれない.または,研究ばかりして教育や学内の仕事にどのぐらい力を入れてくれるのか不安になることもあるかもしれない.とはいえ,全く業績がないのも考えもので筆頭論文が10本前後と学位は必要条件ではないかと思う.もちろん,社会人経験が豊富であること,格別な能力・技能を持つ,あるいは研究活動を中心業務に出来る旧帝大大学院大学等は話は別だろうと思う.

第二関門の面接だが,多くの大学では面接に2〜3人は候補者を残している.実際に合って話して,人となりを確認したいこともあるだろうし,第1候補者が別の大学に採用される可能性もあるので補欠としても確保したいこともあるだろう.また,大学によっては模擬講義を要求されることもある.模擬講義を要求する時点で,即戦力を望んでいることが垣間見ることができる.私がこれまでの面接で驚いたことはある地方国立大学の最終面接で,業績書に記載したある雑誌名の漢字表記について厳しい指摘を受けたことがある.漢字を正しく書くことが大事なのは分かるが,完全に間違いではなく旧漢字を使用していたことについてかなり厳しく突っ込まれた.その時には直感でこの大学は採用してくれないと感じたが,案の定,別の方が採用された.もしかすると出来レースであったかもしれない.

 

公募戦線を戦う若手教員へのアドバイスとしては,書類を出さないと箸にも棒にもかからないので,まずチャレンジをして欲しいと思う.それと,学会や論文で名前を売ることは最低限の活動として行っておくべきであろうと思うが,あまり政治的になり過ぎない程度にきっちりと仕事をすることが大事だと思う.大学によっては,それぞれの講座が欲しい人材がいても公募をすることが学内の規定にあるので,公募をすることもあるようだ.だが,それで実際に公募によってより優秀な人材が応募してこれば,中には反対する教員が出てくるかもしれないし,可能性がゼロとは限らない.

 

公募を行う側の大学への要望であるが,最低,書類選考によって不採用の連絡はすべきだと思う.通常の大学は締め切りから2~3か月で連絡が来るが,半年経っても1年以上経っても何の連絡もない大学があった.履歴書,業績書を各大学の様式に従って作成し抜き刷りを用意するのも一苦労なので,大学側もその苦労をくみ取って欲しい.中には講座の代表教授から丁寧な断りの手紙付きで,提出した業績の原本を返送していただき不採択の連絡をいただいたケースもある.私が採用する側の立場になった際には見習いたい行為である.

 

これだけJREC‐INで公募が行われていても中には”出来レース”もあるであろう.しかし,例え出来レースでもレースに出場することで得るものはあるはずである.もちろん初めから,知り合いを通じて”出来レース”と分かっていれば話は別だが.公募が開始して締め切りまでが2週間なんていうのは怪しいですね.先ほども書きましたが,ただこの出来レースも内部の教員が好んで行っている訳ではないケースが多いと思うので,そのあたりの事情は応募する側も理解しておかないといけないですね.

いざ大学教員になってみるとコネで入職した人がこんなに多いのかと驚くこともある.コネが良いか悪いかについては,何とも言えないがコネによる入職者が多いとよく言うとアットホームというか,競争が少なくなるというか,悪事を働きにくくなるとかもあると思う.悪く言うと競争が起きにくいので成果(アウトプット)が停滞するなどの弊害もあると思う.コネを作るのも研究者の仕事の一つと捉えることもできるが,ちょっと変わり者でもコネがあまり無くても誰も思いつかない,世の中を変える様な人材や研究成果を挙げられる人物も大学には必要だとも思う.

 

最後に重要なことは,今の職場や研究所,大学における人間関係やパフォーマンスが次につながるということである.業界は意外と狭いので,知り合いの知り合いを含めると国内の大学では多くの方が何らかのつながりがあると考えて間違いないであろう.したがって一番,近くで研究を行っている指導教員,上長,同僚と良い関係でいることが,公募戦線を戦う上で結果的には一番,重要だと感じる.